短時間で「伝わる」文章を書くための最初の一歩：目的設定ステップ
ビジネスシーンでは、毎日多くの文章を作成したり読んだりする機会があります。メール、報告書、チャットメッセージなど、形式は様々です。しかし、「時間をかけて書いたのに、どうも意図が伝わっていないようだ」「何から書き始めれば良いか分からず、つい後回しにしてしまう」といった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
このような課題の根本には、「書く目的が曖昧になっている」という共通点があることが少なくありません。目的がはっきりしないまま書き始めると、どこへ向かうべきか分からなくなり、結果として焦点がぼやけた、読み手に伝わりにくい文章になってしまいます。
逆に、文章を作成する前に「誰に」「何を」「どうなってほしいのか」という目的を明確にしておくと、その後の構成や表現方法がスムーズに決まり、効率的に、かつ「伝わる」文章を作成できるようになります。これは、文章作成における最も重要で最初に行うべきステップと言えます。
ここでは、誰でもすぐに実践できる、文章作成の目的を明確にするための4つのステップをご紹介します。
ステップ1：文章の「読み手」を明確にする
どのような文章にも、それを読む「相手」がいます。その相手が誰であるかを具体的に特定することが、目的設定の最初のステップです。
- 相手の立場や役割: 上司、部下、同僚、他部署の担当者、顧客など。
- 相手の知識レベル: その話題についてどの程度知っているか、専門用語は通じるか。
- 相手の関心や背景: どのようなことに興味があるか、どのような状況に置かれているか。
例えば、同じ報告書でも、技術的な詳細まで知りたい上司向けなのか、それとも全体像だけ把握したい経営層向けなのかによって、書くべき内容は大きく変わります。読み手を明確にすることで、相手に合わせた適切な情報量や表現方法を選ぶ基準ができます。
ステップ2：「伝えたい情報やメッセージの核」を特定する
次に、文章を通して最も伝えたいこと、核となる情報やメッセージは何なのかを特定します。
- 今回のコミュニケーションで、相手に絶対に知っておいてほしいことは何か。
- 伝えたい複数の情報の中で、最も重要なポイントは何か。
複数の事柄を伝えたい場合でも、その中で最も根幹となるメッセージを見つけることが重要です。これを特定することで、文章全体の方向性が定まり、不要な情報や脇道に逸れることを防げます。いわば、文章の「テーマ」を明確にするステップです。
ステップ3：「読み手にどうなってほしいか」行動や状態の変化を定義する
文章を作成する最終的な目的は、読み手に何らかの影響を与え、特定の行動を取ってもらったり、状態を変化させたりすることにある場合が多いです。この「読み手にどうなってほしいか」を具体的に定義します。
- 文章を読んだ後、相手にどのような行動を取ってほしいか？ (例: 返信する、承認する、資料を確認する、会議に参加する、〇〇を提出する)
- 文章を読んだ後、相手にどのような状態になってほしいか？ (例: 内容を理解する、状況を把握する、安心する、納得する)
この「望む結果」を明確にすることが、文章作成の最も重要な目的となります。これが決まれば、文章の締めくくり方や、盛り込むべき具体的な依頼事項などが自然と見えてきます。
ステップ4：特定した要素を「目的ステートメント」として言語化する
ステップ1から3で特定した要素（誰に、何を、どうなってほしいか）を、簡潔な言葉で言語化します。これを「目的ステートメント」と呼びます。必ずしも文章中に含める必要はありませんが、自分自身が書くべき文章の方向性を見失わないための指針となります。
目的ステートメントの例：
- 「〇〇部長（誰に）に、新しいプロジェクトの企画内容（何を）を理解してもらい、承認を得る（どうなってほしい）。」
- 「△△さん（誰に）に、次回の打ち合わせの日程候補（何を）を伝えて、返信をもらう（どうなってほしい）。」
- 「プロジェクトメンバー全員（誰に）に、今日の会議での決定事項と各自のタスク（何を）を正確に共有し、各自の作業を開始してもらう（どうなってほしい）。」
このように目的を言語化することで、書くべき文章の骨子が明確になり、迷いなく作業を進めることができます。
目的設定の実践がもたらす効果
文章作成前にこの4つのステップで目的を明確にする習慣をつけることで、以下のような効果が期待できます。
- 書くスピードが上がる: 何を書くべきか、どこに着地するかが明確なため、考え込む時間が減ります。
- 伝わりやすさが向上する: 読み手と目的に焦点を絞ることで、自然と相手に響く、行動を促す文章になります。
- 誤解や手戻りが減る: 意図が明確に伝わるため、「思っていたのと違った」といった誤解が生じにくくなります。
- 読み手の反応が変わる: 読み手は何を求められているのかが分かりやすいため、期待する反応を得やすくなります。
まとめ：最初の一歩を踏み出しましょう
「伝わる」文章を作成するための道のりは、まずその文章を書く「目的」を明確にすることから始まります。今回ご紹介した4つのステップ、「誰に」「何を」「どうなってほしいのか」を意識し、目的を言語化する習慣は、短時間で効果的な文章を作成するための強力な武器となります。
ぜひ次のビジネス文章を作成する際に、これらのステップを試してみてください。この最初の一歩が、あなたの文章作成の効率と伝達力を格段に向上させるはずです。
目的が明確になったら、次はどのように情報を構成し、相手に分かりやすく伝えるかというステップに進みます。今後の記事では、具体的な構成方法や表現テクニックについても解説していく予定です。