複数の情報を統合して「伝わる」報告書・企画書を書くステップ
ビジネスの現場では、様々な情報源からデータを集め、それらを基に報告書や企画書を作成する機会が多くあります。しかし、集めた情報をただ羅列するだけでは、読み手は何が重要なのか、作成者は何を伝えたいのかを理解しづらくなります。結果として、意図が正確に伝わらず、誤解が生じたり、必要な行動に繋がらなかったりする可能性があります。
特に、複数の部署からの情報、市場調査の結果、競合他社の動向など、多岐にわたる情報を扱う場合、それらをどのように整理し、一つの論理的な文章にまとめ上げるかが課題となります。短時間で効率よく、かつ「伝わる」文章を作成するためには、情報の整理と構造化のステップが不可欠です。
ここでは、複数の情報を収集してから読み手に伝わる文章に仕上げるまでの具体的なステップをご紹介します。このステップを実践することで、複雑な情報も分かりやすく整理し、説得力のある報告書や企画書を作成することが期待できます。
ステップ1: 情報の収集と分類
まず、報告書や企画書の目的に沿って必要な情報を網羅的に収集します。この段階では、情報の質や量は一旦気にせず、関連すると思われる情報を広く集めることが大切です。
情報が集まったら、次にそれらを分類します。情報の分類は、後の整理作業の土台となります。例えば、以下のような基準で分類することが考えられます。
- 情報源別: 社内データ、顧客の声、市場調査、ニュース記事など
- テーマ別: 売上データ、顧客属性、競合サービス、法的規制など
- 時間軸別: 過去の推移、現在の状況、将来予測など
- 肯定/否定: プロジェクトの成功要因、課題点など
分類の際は、付箋を使ったり、表計算ソフトで項目ごとに分けたりするなど、視覚的に整理すると全体像を把握しやすくなります。
ステップ2: 情報の取捨選択と要約
収集・分類した情報の中から、今回の報告書や企画書の目的に照らして本当に必要な情報を選び出します。すべての情報を盛り込む必要はありません。むしろ、情報過多は読み手を混乱させます。目的達成に不可欠な情報に絞り込みます。
選び出した情報は、簡潔に要約します。長い文章や詳細なデータも、伝えたい 핵심(核となるポイント)を抽出して短くまとめます。
例: * 収集した情報: 「〇〇市場の最新調査によると、2023年のスマートフォン普及率は前年比3%増の90%に達し、特に20代から30代の若年層における高機能モデルへの買い替え需要が増加傾向にあることが分かりました。」 * 要約: 「〇〇市場では、スマホ普及率が90%に達し、若年層を中心に高機能モデルへの買い替え需要が増加しています。」
このステップでは、「なぜこの情報が必要なのか」「この情報から何が言えるのか」を常に意識することが重要です。
ステップ3: 情報の構造化(アウトライン作成)
分類・要約した情報を、読み手が最もスムーズに理解できるように論理的な順序で並べ替えます。これが文章の「骨組み」となるアウトラインの作成です。
報告書や企画書には、一般的な構成要素があります。
- はじめに/背景: なぜこの報告書/企画書が必要なのか、現在の状況や課題は何なのかを説明します。
- 現状分析/詳細: 収集・整理した主要な情報を提示します。ステップ1, 2で分類・要約した情報がここに入ります。テーマ別や時系列などで情報を整理し、分かりやすい小見出しを付けます。
- 考察/提案: 現状分析の結果から何が言えるのか、どのような課題があり、それに対してどのような解決策や新しい企画を提案するのかを具体的に記述します。ここで、あなたの主張や結論を明確に示します。
- まとめ/結論: 報告書/企画書全体の要点を簡潔にまとめます。提案の実行による効果予測や、次にとるべき行動なども含めることがあります。
PREP法(Point-Reason-Example-Point)やSDS法(Summary-Detail-Summary)のような文章構成フレームワークも、特定のセクションや全体構成の参考になります。
- PREP法: 結論→理由→具体例→再度結論 の順で構成し、説得力を高めます。
- SDS法: 全体の概要→詳細説明→再度概要 の順で構成し、短い時間で内容を掴めるようにします。
これらのフレームワークを意識し、情報と主張が論理的に繋がるようにアウトラインを構築します。
ステップ4: 情報の可視化と補足
複雑なデータや概念は、文章だけでなく視覚的な要素を活用するとより伝わりやすくなります。
- グラフや図: 数値データはグラフにすると傾向が掴みやすくなります。関係性を示す場合は図を用いると理解が深まります。
- 表: 複数の情報を比較したり、整理して示したりするのに役立ちます。
- 箇条書き: 情報が多い場合や並列の要素を示す場合に、箇条書きを使うとスッキリします。
また、専門用語や業界特有の言葉を使用する場合は、簡単な補足説明を加えるように努めます。これにより、その分野に詳しくない読み手でも内容を理解しやすくなります。
例: * 「KPI(重要業績評価指標)」のように、初出時に括弧書きで補足説明を加える。 * 本文中で専門用語が出てきた際に、「これは〇〇を意味します」と平易な言葉で解説する。
ステップ5: 文章化と推敲
作成したアウトラインに基づき、整理・要約した情報を具体的な文章として書き起こします。この際、丁寧語を使用し、読み手がスムーズに読めるように句読点を適切に打ちます。
文章を書き終えたら、必ず推敲を行います。
- 論理的な繋がりは自然か: 各セクションや段落が論理的に繋がっているか、話が飛躍していないかを確認します。
- 表現は正確か: 事実に基づいているか、誤解を招く表現はないかを確認します。曖昧な表現(「〜だと思われる」「〜でしょう」など)を避け、可能な限り具体的な言葉を使用します。
- 誤字脱字はないか: 音読してみることで、不自然な箇所や誤りに気づきやすくなります。
- 読み手にとって分かりやすいか: 専門知識のない人が読んでも理解できるか、専門用語の補足はあるかなどを確認します。可能であれば、第三者に読んでもらい、分かりにくい点がないかフィードバックをもらうことも有効です。
特に、複数の情報源からの情報を統合している場合、情報源によってニュアンスや数値が微妙に異なることがあります。それらをどのように整合性を持たせて伝えるか、あるいは異なる点も併記して説明するかなど、読み手の混乱を防ぐ配慮が必要です。
まとめ
複数の情報を統合して「伝わる」文章を作成することは、ビジネスパーソンにとって重要なスキルです。情報の収集・分類から始まり、取捨選択と要約、そして読み手が理解しやすいように論理的に構造化し、最後に分かりやすく文章化・推敲するという一連のステップを踏むことで、情報過多に陥らず、伝えたい 핵심 を明確に届けることが可能になります。
このステップは、一度に完璧に行う必要はありません。まずはアウトライン作成に時間をかけ、骨子をしっかりさせることから始めてみてはいかがでしょうか。実践を重ねることで、複雑な情報を効率的に整理し、より伝わる文章を作成する力が身についていくことでしょう。