かんたん伝わる文章術

報告・情報共有で使える:事実を正確に伝える文章作成のステップ

Tags: 報告書, 情報共有, ビジネス文書, 文章術, 正確性, コミュニケーション

ビジネスシーンでは、日々の業務報告や情報共有において、事実を正確に伝えることが非常に重要です。しかし、「事実だけを伝えたつもりなのに誤解された」「どこから書けば良いか分からず時間がかかる」といった課題を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

事実を正確に伝える文章を作成することは、スムーズなコミュニケーションを促し、誤った判断を防ぐ上で不可欠です。ここでは、誰でもすぐに実践できる、事実を正確に伝えるための文章作成ステップをご紹介します。

なぜ事実の正確な伝達が重要なのか

事実を正確に伝えることは、ビジネスにおいて以下のようなメリットをもたらします。

事実を正確に伝えるための文章は、特別なセンスや才能は必要ありません。いくつかのステップを踏むことで、誰でも身につけることができます。

ステップ1:伝えるべき「事実」を明確にする

まず最初に、何を伝えるべき「事実」として捉えるかを明確にします。

例えば、「お客様からクレームがあった」という事象を伝える場合:

このように、事象を5W1Hで分解・整理することで、伝えるべき事実関係が整理されます。

ステップ2:事実と解釈・意見を分ける

整理した情報の中から、「事実」と「それに対する自分の解釈や意見」を明確に区別します。そして、文章ではまず事実を提示し、必要に応じて解釈や意見を付け加える構成にします。

例えば、ステップ1で整理したクレームの件について、

このように、事実と解釈・意見を区別することで、受け手は情報が客観的なものか、それとも送り手の主観が含まれているのかを判断できます。報告や共有の目的によっては解釈や意見も重要ですが、まずは事実を正確に伝えることが基本です。

ステップ3:分かりやすい構成で記述する

整理した事実情報を、受け手が理解しやすい構成で文章化します。

例文(報告メール):

件名:〇〇製品の不具合に関するお客様からのご連絡について(〇〇より)

〇〇部長

お疲れ様です。〇〇です。

本日午後3時頃、〇〇社の〇〇様より、〇〇製品の不具合に関するご連絡をいただきましたので、ご報告申し上げます。

事象の概要:
・日時:〇月〇日 午後3時頃
・相手:〇〇社 〇〇様(TEL: xxx-xxxx-xxxx)
・内容:製品の電源が入らないという不具合についてのご連絡
・状況:〇〇様によると、昨日まで正常に使用できていたが、本日電源ボタンを押しても全く反応がないとのことです。ケーブルやコンセントの確認はしていただいたようです。
・対応:まずは製品のご返送をお願いし、弊社で状況を確認させていただく旨をお伝えいたしました。代替品の発送についても検討しております。

上記を踏まえ、〇〇様には大変ご迷惑をおかけしており、迅速な原因究明と対応が必要と考えられます。製品が到着次第、速やかに調査を実施いたします。

取り急ぎ、ご報告申し上げます。

この例文では、件名と冒頭で報告の概要を伝え、その後に箇条書きで5W1Hに沿った事実関係を整理しています。最後に、報告者の所感や今後の対応方針を付け加えています。このように構造化することで、読み手は短時間で必要な情報を正確に理解できます。

ステップ4:客観的な表現を心がける

事実を伝える際は、可能な限り客観的で具体的な表現を用います。

NG例: 「会議で多くの人から反対意見が出ました。」 OK例: 「〇月〇日の会議では、参加者10名中7名から反対意見が表明されました。」

具体的な表現は、事実の正確性を高め、読み手の解釈のブレを減らします。

ステップ5:誤解を生みやすい表現を避ける

同じ事実を伝えるにも、言葉選び一つで受け手の印象や理解度は変わります。誤解を招きやすい曖昧な表現や多義的な言葉は避けるように注意します。

これらのステップを意識することで、報告や情報共有の文章は格段に分かりやすく、正確に事実を伝えることができるようになります。

まとめと実践へのヒント

事実を正確に伝える文章作成は、

  1. 伝えるべき「事実」を客観的に明確にする
  2. 事実と解釈・意見を分ける
  3. 分かりやすい構成で記述する
  4. 客観的な表現を心がける
  5. 誤解を生みやすい表現を避ける

という5つのステップで実践できます。

これらのステップを一度に全て完璧に行う必要はありません。まずは、日々の短い報告メールやチャットでの情報共有から、「事実を明確にする」「事実と意見を分ける」といった一部のステップを意識して取り入れてみてください。慣れてきたら、他のステップも加えていくことで、自然と正確に伝わる文章を作成できるようになるはずです。

正確な事実伝達は、円滑なビジネスコミュニケーションの基盤です。ご紹介したステップが、皆様の文章作成の一助となれば幸いです。