ビジネスメール・報告書で誤解されないための表現テクニック
ビジネスシーンにおいて、作成したメールや報告書で意図が正確に伝わらず、情報共有に手間取ったり、認識のずれから手戻りが発生したりといった課題に直面することは少なくありません。特に、短時間で多くの情報を処理する必要がある中で、「伝えたつもり」「理解したつもり」といったあいまいさが、コミュニケーションの障壁となることがあります。
この記事では、「かんたん伝わる文章術」のコンセプトに基づき、ビジネスメールや報告書で誤解を防ぎ、正確に意図を伝えるための具体的な表現テクニックをステップバイステップでご紹介します。
なぜあなたの文章は誤解されてしまうのか
誤解が生じる文章には、いくつかの共通する特徴があります。主な原因として、以下のような点が挙げられます。
- あいまいな表現: 数値、時間、範囲などが明確でない言葉を使用している。
- 主語・述語の不明確さ: 誰が何をするのか、責任の所在がはっきりしない。
- 前提情報の不足: 読み手が知っているはずだと思い込み、必要な背景情報や文脈を省略している。
- 抽象的な指示: 具体的な行動や期待される結果が分かりにくい指示になっている。
これらの原因を踏まえ、次に誤解を防ぐための具体的なテクニックを見ていきましょう。
誤解を防ぐための表現テクニック
1. あいまいな言葉を具体的に言い換える
ビジネスシーンでは、「なるべく早く」「適切に」「ある程度」「〇〇あたり」といったあいまいな表現が使われがちです。これらの言葉は便利な一方で、人によって解釈が異なるため、誤解の原因となります。
改善のポイント:
- 数値・期限を明確にする: 「なるべく早く」→「〇月〇日〇時までに」「本日中に」
- 範囲・程度を具体的に示す: 「ある程度の情報」→「〇〇に関する情報」「〇〇に関する過去3年分のデータ」
- 指示を明確にする: 「適切に対応してください」→「〇〇の手順で対応してください」「〇〇さんに相談して進めてください」
例文:
- NG: 「先日お願いした件、なるべく早く進めていただけますか。」
- OK: 「先日お願いした〇〇の件、〇月〇日(〇)の午前中までに進捗状況をご報告いただけますでしょうか。」
このように、具体的な数値や期限、内容を補足することで、相手はどのように行動すべきか、何を準備すべきかが明確になります。
2. 主語と述語を明確にする
文章の主語(誰が・何が)と述語(どうする)がはっきりしないと、誰が責任を持って行動するのか、何についての情報なのかが分からなくなり、誤解が生じます。特に日本語は主語が省略されがちなので注意が必要です。
改善のポイント:
- 動作や状態の主体を明確にする: 誰がその行動をするのか、何がその状態なのかを明記する。
- 受動態の多用を避ける: 「〜されました」ではなく、「誰が〜しました」と能動的な表現を用いる方が分かりやすい場合があります。
例文:
- NG: 「〇〇の件は処理済みです。」(誰が処理したのか不明確)
-
OK: 「〇〇の件は、私が本日中に処理を完了させました。」
-
NG: 「資料が作成されました。」(誰が作成したのか、いつ作成されたのか不明確)
- OK: 「田中さんが〇月〇日に、会議用の資料を作成しました。」
主語と述語を明確にすることで、情報の正確性が増し、責任の所在も明らかになります。
3. 前提や背景情報を補足する
文章作成者は、つい自分が知っている情報を読み手も知っているだろうと思い込みがちです。しかし、読み手と共有している情報が異なると、文章の意図が正しく伝わらないことがあります。
改善のポイント:
- なぜこの情報を共有するのか、目的を最初に示す: 目的を明確にすることで、読み手は何に注意して読めば良いかが分かります。
- 関連する背景や経緯を簡潔に含める: なぜこの話になっているのか、どのような状況なのかを伝えることで、情報の重要性や文脈が理解しやすくなります。
- 専門用語や社内略語には説明を加えるか、一般的な言葉に置き換える: 読み手がその言葉を知らない可能性を考慮します。
例文:
- NG: 「明日の会議、例の件の資料を持ってきてください。」(例の件が何か、読み手は知らないかもしれない)
- OK: 「明日の営業会議で、先日ご共有したAプロジェクトの進捗についてご説明いただけますでしょうか。会議には部長も参加されますので、最新の資料を人数分ご準備いただけますと幸いです。」
このように、目的、背景、そして具体的な内容を補足することで、読み手はスムーズに情報を理解し、適切に対応することができます。
実践のためのヒント
これらのテクニックは、すぐに全てを完璧に実践する必要はありません。まずは、普段よく使う表現の中で、あいまいになりがちな言葉や、主語が抜けがちな癖がないかなどを意識することから始めてみてください。
- 書く前に伝えるべきことを整理する: 誰に、何を、なぜ伝えるのかを整理してから書き始めると、抜け漏れやあいまいさを減らすことができます。
- 書いた後に読み返す: 可能であれば、書いた文章を時間を置いて読み返したり、同僚に目を通してもらったりすることで、自分では気づけなかった誤解のポイントを発見できます。
- テンプレートを活用する: よく使うメールの目的(報告、依頼、相談など)ごとに、必要な情報を盛り込むテンプレートを作成しておくと、抜け漏れを防ぎつつ効率的に文章を作成できます。
まとめ
ビジネス文章において誤解を防ぎ、正確に意図を伝えるためには、「あいまいな言葉を具体的に言い換える」「主語と述語を明確にする」「前提や背景情報を補足する」といった基本的なテクニックが非常に有効です。これらのポイントを日々の文章作成で少しずつ意識することで、あなたの文章はより「伝わる」ものへと変わっていくでしょう。
伝わる文章は、コミュニケーションを円滑にし、業務効率の向上にも繋がります。ぜひ、今回ご紹介したテクニックを日々の業務で実践してみてください。